自宅でも手軽に行える腕立て伏せは、腕の筋肉以外にも様々な筋肉を刺激でき、ボディメイクに欠かせない定番のトレーニングです。また、腕立て伏せにも様々なバリエーションがあり、種類によって鍛えられる筋肉が異なります。
正しいフォームはもちろん、適切な回数や頻度で行えば、アプローチできる筋肉を効率よく鍛えられ、たくましい上半身を目指すことができます。
本記事では、腕立て伏せで鍛えられる筋肉の部位や正しいフォーム、効果を高めるポイントなどを紹介します。
腕立て伏せは腕の筋肉以外も効果がある
腕立て伏せは名前の通り、腕の筋肉を鍛える筋トレというのが一般的な認識ですが、実は腕以外にも上半身の様々な筋肉を刺激することができます。
腕立て伏せの種類によって鍛えられる筋肉が異なりますが、大まかなメインターゲットとサブターゲットで鍛えられる筋肉は同じです。
腕立て伏せのメインターゲットとなるのは、以下3つの部位です。
- 大胸筋
- 三角筋
- 上腕三頭筋
そして、サブターゲットとなるのが以下4つの部位です。
- 腹直筋
- 腹斜筋
- 腹横筋
- 前鋸筋
腕立て伏せが効果的なメインの筋肉部位
腕立て伏せは、二の腕にあたる上腕三頭筋を鍛えることができるため、引き締まった二の腕やたくましい腕を目指すことができます。
また、腕立て伏せは腕の筋肉をメインに鍛えるトレーニングと思っている方が多いですが、メインターゲットには、厚い胸板を作る大胸筋も含まれます。
そして、肩に位置する筋肉の三角筋。腕を押し上げる作用を担うため、腕立て伏せで鍛えることができます。三角筋は細かく前部・中部・後部に分けられ、特に前部を刺激することができます。
腕立て伏せでサブ的に鍛えられる筋肉部位
前鋸筋(ぜんきょきん)はあまり聞き慣れない筋肉かもしれませんが、肩甲骨から脇の下に付く筋肉です。腕を前方に押し出す動きに大きく関わるため、腕立て伏せで鍛えられます。
ボクサー筋とも言われる前鋸筋は、腕をメインに使うスポーツアスリートの脇を見ると、サメのエラのように立派な前鋸筋が浮き出て見えます。
そして、腹筋群の腹直筋・腹斜筋・腹横筋は、腕立て伏せで上半身の姿勢を維持する際に使われます。筋トレ初心者の方だと、腕立て伏せで腹筋群の筋肉痛になる方も少なくなく、ウエスト引き締め効果もあります。
腕立て伏せで筋肉に効かせる正しいフォーム
腕立て伏せには様々なバリエーションがありますが、ここでは最も一般的な腕立て伏せを解説します。
馴染みのある腕立て伏せですが、効果的に鍛えるためには正しいフォームで行うことが重要です。また、間違ったフォームは効果を半減させるだけでなく怪我を伴うので、今一度正しいフォームを確認しましょう。
腕立て伏せの正しいフォーム・やり方
1. 手とつま先をつき、体を浮かせる
床にうつ伏せになり、肩幅より拳1個分広く、肩が手首と垂直になる位置に手をつきます。手首をハの字にすると痛めてしまうので、指先が前を向くように手をつきます。その後、つま先を立て、手とつま先で体を支えます。
腰が上がっていたり、下がらないように、頭から踵まで一直線になるようにしてください。横側からフォームを見たときに、手首、肩、足がしっかりと直角三角形になっていることが正しいスタートポジションです。
2. 息を吸いながら体を下げる
視線を落とすと首が下がってしまい、腰が上がってフォームが崩れます。頭を下げないように両手より少し前に目線を向け、踵まで一直線にするよう意識しましょう。
肘を曲げる時に外側に開くことで大胸筋を刺激することができますが、開き過ぎは手首や肘に負担がかかります。フォームを上から見た時に、全体が矢印型になっているように、肘の向きに気を付けましょう。
3. 床につく寸前でまで下げたら2秒キープ
頭から踵まで一直線の上体をキープさせたまま、胸が床につく寸前まで体を下げていきます。ボトムポジションに近づくに連れてきつくなり、息を止めてしまいがちですが、しっかり息を吐きながら下げます。
大胸筋を完全収縮させ、しっかり刺激できているかの確認を含め、ボトムポジションで2秒キープします。腰が下がりやすい体勢なので、しっかり体幹を安定させましょう。
4. 息を吐きながら元に戻る
体を上げる時も一直線を崩さないようにします。口から息を吐くと腹圧がかかり、体を安定させることができます。上腕三頭筋への刺激を感じながら、床を押すイメージで体を上げていきます。
腕立て伏せの筋トレ効果を高めるポイント
誰でも手軽に行える腕立て伏せは、決して難しい筋トレではありません。そのため、回数だけこなし、フォームが疎かになってしまいがちです。そうなると、ターゲットの筋肉にアプローチできず、腕立て伏せの効果が半減します。
そこで、腕立て伏せの筋トレ効果を高めるポイントをご紹介します。
腕立て伏せで筋トレ効果を高めるポイントは、以下の3つです。
1. 体を一直線に保つ
正しいフォームで行うことは、筋トレを効率的にするだけでなく、怪我を防止する意味もあります。腕立て伏せは手首を痛めやすいため、正しいフォームを身に付けましょう。
腕立て伏せでは、肩から足まで一直線に保つことで、メインターゲットを狙うことができます。その姿勢が崩れると重心がずれ、筋トレの効果が半減し手首を痛める可能性があります。
2. 呼吸を止めず腹圧をかける
腕立て伏せに限らず正しい呼吸で行うことが、筋トレの効果を高める重要なポイントです。正しい呼吸は腹圧を高め、怪我を防止したり体幹を安定させ、正しいフォームを保つことにつながります。
呼吸を止めず、筋肉を収縮させて力を入れる時に、息を吐き切ります。しっかり呼吸をして体幹を安定させることで筋トレ効果が高まり、メイン以外のサブターゲットも鍛えることができます。
3. 鍛えたい部位を意識する
鍛えたい筋肉を意識することで、効果的に筋肉を刺激することができ、正しいフォームで行うことができます。通常の腕立て伏せは、主に大胸筋を狙って行うトレーニングなので、大胸筋の収縮を意識します。
腕立て伏せは種類によって鍛えられるメインターゲットが変わるので、鍛える筋肉の収縮を感じ、正しいか確認しながら丁寧に行いましょう。
腕立て伏せで筋肉を鍛えるための回数・頻度の知識
筋トレは回数や頻度が多くても少なくても、適切な設定をしなければ効率よく筋肥大させることができません。そのため、腕立て伏せで効果的に筋肉を鍛えるために、回数や頻度は重要です。
では、どのくらいの回数や頻度で腕立て伏せを行えばいいのか、設定の目安についてご紹介します。
【レベル別】腕立て伏せの回数目安
筋トレは回数が多をこなせばいいというわけではありません。筋トレ初心者の方は、10回もできない方も少なくなく、正しいフォームを身に付け、まずは10回を目標に継続しましょう。
大胸筋や上腕三頭筋にある程度の筋肉がついている中級者の方は、継続していると15回もいずれはこなせるようになります。徐々に回数を増やして上級者を目指しましょう。
回数を重ねてしまうと持久筋がついてしまい、なかなかパンプアップにはつながりません。上級者で20回が余裕でできてしまう場合は、様々なバリエーションの中から負荷が高い腕立て伏せを取り入れたり、プッシュアップバーを使うと効率よく鍛えられます。
また、より負荷を加えたい場合は腕立て伏せの際に重りの入ったリュックを背負う方法もあります。8~12回で限界がくる自体重以上の負荷を掛ければ、より効率よく筋肥大させることができます。
レベル | 回数 |
---|---|
初心者 | 10回 |
中級者 | 15〜20回 |
上級者 | 20〜回 |
超回復理論から考える腕立て伏せの頻度目安
筋肉を効率よく肥大させるには、トレーニングと栄養はもちろんですが、休養も同じくらい重要になります。トレーニングを行うと筋線維が損傷し、筋肉痛が起こります。
損傷した筋肉はしっかり休ませ、回復させることで筋線維が太くなり、筋肉を肥大させることができます。これを超回復といい、損傷した筋肉は48~72時間の休養を設ける必要があります。
超回復理論を元に、腕立て伏せの頻度は週2~3回行い、間にはかならず休養日を設けましょう。
筋肉に効く腕立て伏せの種類・バリエーション
筋トレの中でもバリエーション豊富な腕立て伏せ。種類によって鍛えられる筋肉の優先順位が変わり、より鍛えたい筋肉にアプローチすることができます。自分の鍛えたい筋肉に合わせてトレーニングに取り入れ、正しいフォームで行いましょう。
腕立て伏せの種類1. 膝つき腕立て伏せ
床に膝をついた状態で腕立て伏せをするトレーニングで、通常の腕立て伏せがきつい方におすすめです。体幹に自信ない方でも大胸筋と上腕三頭筋が鍛えられ、筋肥大させることができます。
How To
- 両手と両膝を床につき、前に四つん這いになる
- 肩幅より拳1個分程度広めに、肩から膝まで一直線になる位置に手をつく
- 肩と手首が垂直なのを確認し、膝より下は浮かせる
- 背筋を伸ばし、肘を曲げて胸を床に近づける
- 一度停止する
- 上腕三頭筋を使って体を押し上げ、元に戻り繰り返す
腕立て伏せの種類2. ワイドプッシュアップ
通常の腕立て伏せより広い手幅で行う腕立て伏せです。上腕三頭筋への刺激が低くなりますが、大胸筋への負荷が増えるので、自重トレーニングでも大胸筋を重点的に鍛えることができます。
How To
- 頭を頂点に三角形を作るよう肩幅より広い位置に両手を置く
- 足を伸ばし、肩から一直線になるよう床から体を浮かす
- 腰やお尻を曲げないように、肘を曲げて胸を床に近づける
- 床につく寸前まで下げ、大胸筋を完全伸展させる
- 床を押すイメージで体を持ち上げ、元に戻す
- 元の位置に戻り繰り返す
腕立て伏せの種類3. ナロープッシュアップ
手幅を極端に狭くして行う腕立て伏せです。上腕三頭筋への負荷が高く、三角筋も副次的に鍛えられ、自重トレーニングでも引き締まった二の腕や、太く逞しい腕周りを作ることができます。
How To
- 肩幅より拳2個分狭く床に手をつく
- 足を伸ばし、肩から一直線になるよう床から体を浮かす
- 体は一直線を保ち、肘を広げないように体を落とす
- 床につく寸前まで下げ、余裕があれば一時停止する
- 床を押すイメージで体を持ち上げ、元に戻す
- 元の位置に戻り繰り返す
腕立て伏せの種類4. ヒンズープッシュアップ
体で円を描くように大きく動かす腕立て伏せです。大胸筋や上腕三頭筋、三角筋はもちろん、体を回す動きにより背筋群や腹筋群も副次的に鍛えられ、上半身全体を満遍なく強化することができます。
How To
- うつ伏せになり、肩幅よりやや広めに手と足を広げる
- 腰を高く突き出し、股関節が曲がった姿勢になる
- 頭から滑らせるように、体を下ろしていく
- 床につく寸前まで下ろし、背中を反らせるように体を上げる
- 腰を後方に突き出しながら、元に戻り繰り返す
腕立て伏せの種類5. リバースプッシュアップ
ベンチや椅子などを用いて、背中側で腕立て伏せを行うトレーニングです。腕で状態を支えるため上腕三頭筋や三角筋への負荷が高く、たくましい腕を作ることができます。さらに、肩甲骨周りの筋肉を使うため、広背筋も同時に鍛えることができます。
How To
- 椅子を用意し、背を向ける
- 座面の前端を握るように、肩幅に手をつく
- 背筋を伸ばし、肘を曲げずに足を前に出す
- 肩甲骨を寄せ、足を起点に肘を開かないように曲げ、体を落とす
- お尻が床につく寸前まで下ろす
- 上腕三頭筋の収縮を意識しながら体を持ち上げ、元に戻る
筋肉に効くプッシュアップバーを使う腕立て伏せ
器具を使わずに手軽に行える腕立て伏せですが、効果を高めるプッシュアップバーがあります。シンプルな取っ手の形をしていて、片手に1つずつグリップ握り、通常通り腕立て伏せをするだけです。
プッシュアップバーを使うことで床からの距離が確保でき、上下の可動域を広くすることができます。深く沈み込むことで大胸筋への負荷が高くなり、大胸筋全体をバランスよく鍛えられ、厚い胸板をつくることができます。
そして、それと同時に上腕三頭筋や三角筋への刺激も強くなるため、自重の腕立て伏せでもプッシュアップバーを使うことで、たくましい腕と肩周りを目指せます。
さらに、効率的に筋肉を鍛えられるだけでなく、プッシュアップバーを握ることで手首が直角になるのを防ぎ、手首を痛めやすい腕立て伏せの怪我を予防する効果もあります。
その他にも、逆立ち腕立て伏せや体幹を鍛えるL-sitなど、プッシュアップバーを使うことでトレーニングの幅が広がります。
【Q&A】腕立て伏せと筋肉について多い質問
動作が簡単な腕立て伏せを行うと、本当にフォームが正しいのか、筋肉痛にならないといった不安や疑問は少なくありません。
そこで、腕立て伏せと筋肉について多い質問や、疑問についてご紹介していきます。
Q. 腕立て伏せで腕に効いている感覚がない原因は?
正しいフォームで腕立て伏せを行えば、メインターゲットがしっかり鍛えられます。腕立て伏せでは、体を持ち上げる時に腕の筋肉が収縮し、刺激することができます。
通常の腕立て伏せの場合、メインターゲットの中でも大胸筋に刺激が入るため、いまいち腕に刺激がない感覚があるかもしれません。
とはいえ、腕に効いている感覚がない場合は、手幅を広くし過ぎしてしまっている可能性が高いです。ナロープッシュアップで分かるように、手幅を狭くすれば大胸筋より腕に効く腕立て伏せができます。
Q. 腕立て伏せで筋肉痛にならないのは、やり方が悪い?
腕立て伏せに限らず、筋肉痛にならないからといって、必ずしもやり方が悪いというわけではありません。体が筋肉痛に慣れてしまっているか、もしくは筋肉が正しく強化されてる証拠です。
自重トレーニングは負荷のコントロールが難しく、継続するにつれて同じメニューでは筋肉痛にならなくなります。
腕立て伏せのバリエーションを変えたり、回数を増やしたり、よりゆっくり動作することで負荷を高めることができるので、余裕が出てきたと感じたらメニューを見直してみましょう。
Q. 腕立て伏せ前後におすすめのストレッチは?
腕立て伏せでは肩甲骨や手首、肩周りの柔軟が必要になるため、腕立て伏せ前後のストレッチは積極的に取り入れるといいでしょう。
腕立て伏せ前は、硬くなった関節を柔らかくするために、肩関節や手首の関節を回すストレッチをしましょう。また、姿勢を維持するために、背筋を伸ばすストレッチも取り入れるのがおすすめです。
腕立て伏せ後は、使った筋肉をほぐすと疲労回復の期待できます。そのため、メインターゲットとなる大胸筋や、腕肩周りの筋肉を伸ばすストレッチがおすすめです。
腕立て伏せで腕や上半身の筋肉を鍛えよう
腕立て伏せは、腕の筋肉以外にも、様々な筋肉を刺激できるトレーニングです。バリエーションも豊富で、自重トレーニングで悩む負荷の物足りなさも、色々な腕立て伏せを行うことで男らしい胸板や、逞しい腕肩周りを作ることができます。
ご紹介した腕立て伏せの正しいフォームや、効果を高めるポイントを意識して、色々なバリエーションの腕立て伏せにチャレンジしてみてください。