前腕筋の筋トレをすると、腕全体のシルエットが整うほか、スポーツの競技力アップや、トレーニングのケガ予防にもなります。さらに腕まくり時や、半袖の季節に目立つ隆起した前腕は、男らしさの象徴です。
全身のパーツの中で、おろそかにされがちな部位ですが、意外に目立つ部分でもあります。筋肉質で血管がボコボコと浮き上がる前腕に、男性なら一度は憧れを抱いたことがあるでしょう。
今回は、前腕筋の効果的な筋トレをご紹介します。
前腕筋(ぜんわんきん)とは|筋トレ基礎知識
前腕筋とは、肘から手首の間に付いている筋肉の総称です。約20種類ある筋肉群を指す呼び名であり、単一の筋肉名ではありません。前腕筋が収縮することで、肘を曲げる、指や手首を曲げ伸ばしする、肘から先を捻る動作ができます。
コップをつかむ、瓶のフタを回す、タオルを絞るなど、日常動作でも頻繁に使われる筋肉で、いわゆる握力とも密接にかかわっています。
前腕筋を構成する筋肉の名前
前腕には約20種類もの筋肉が存在しますが、役割による分類が可能です。
- 前腕屈筋群→手の平の方に手首を曲げる
- 前腕伸筋群→手の甲の方に手首を曲げる
- 肘関節屈筋群→肘を曲げる
- 回内筋群→肘から先を内側に捻る
- 回外筋群→肘から先を外側に捻る
筋トレで発達させると見栄えが良くなる筋肉は、1の長掌筋、橈骨手根屈筋、尺骨手根屈筋、2の長橈側手根伸筋、総指伸筋、尺側手根伸筋、3の腕橈骨筋、4の円回内筋、5の回外筋です。
細かい筋肉まで丁寧に鍛えることで、彫刻刀で削ったような深い溝が作り出せます。
筋トレによって前腕筋が太くなる仕組み
筋トレをすると、前腕筋は発達して太くなります。方法は大きく分けて2つです。
- 中~高重量の負荷で8~12回を繰り返し、筋繊維に細かな傷をつけ、修復後の筋肥大を狙う超回復法
- 低重量の負荷で20~30回を繰り返し、筋肉内の血管に代謝物をため、筋肥大ホルモンの分泌を促すパンプアップ法
前腕筋を発達させるには、2のパンプアップ法が適しています。前腕部分は細かな筋肉が、折り重なるように密集していて構造が複雑。高重量で追い込むと、痛めやすい箇所です。また、前腕筋がまたがる肘と手首の関節も、大きな負荷を与えるとケガをしやすい部位。
加えて、筋繊維には速筋と遅筋がありますが、前腕には遅筋繊維が多く、軽い負荷で多回数の刺激に反応します。したがって、前腕筋の筋トレとしてふさわしいのは、より効率的な2のパンプアップ法です。
前腕筋を鍛えることで握力が強くなる
前腕筋の筋トレは、握力も強くします。前腕の筋肉は、肘から手首までで完結してるわけではありません。手首をまたいで手の中を通り、指を動かす筋肉も複数あります。前腕筋を総合的に鍛えると、物をつかむ動作が楽になるのはそのためです。
ちなみに現代人には欠かせない、キーボードやスマホを操作する動きにも、握力はかかわっています。
前腕筋を筋トレで鍛える効果・メリット
筋トレによるボディメイクは、胸、背中、脚の大筋群を優先するのが基本です。しかし前腕筋を、おろそかにはできません。顔を除いて最も露出している部分は前腕です。人は見えている一部から、全体を想像します。
つまり、その人が筋肉質かどうかの印象は、前腕筋で決まるともいえるのです。
男らしさを感じる太い前腕をつくれる
筋肉の中で、高く盛り上がった所を筋腹といいます。複数の筋肉が、山脈のように連なる前腕筋。筋腹が隆起し、隣り合う筋肉の間に深い溝ができれば、男らしさが演出できます。腕まくりした時に覗く起伏ある前腕に、女性は魅力を感じるものです。
もともと脂肪がつきにくく、血管が浮き出やすい部位でもあるのが前腕です。筋トレで鍛え抜かれた太い前腕筋は、スポーティーで健康的な印象を与えます。
筋トレで高重量を扱えるようになる
握力の強さにもかかわる前腕筋。ダンベルやバーベルを握って行う種目では、握る力によっても使用重量が決まります。特に胸、背中、脚の大きな筋肉を鍛えたい時は、高重量でのトレーニングが効果的。
ところが握力が弱いと、セットの最後まで重りを保持できず、ターゲット筋を十分に追い込めません。前腕筋を強化して握る力が強くなれば、全身のトレーニングの質も上がります。
スポーツパフォーマンスの向上につながる
前腕筋を鍛えると、スポーツのパフォーマンス向上に役立ちます。ラケットやゴルフクラブの操作が安定し、力強いスイングができるからです。また野球やバスケットボールの投動作や、バレーボールのスパイクでも、手首を素早く切り返す前腕の筋力がものをいいます。
さらに柔道やレスリングでも、相手をつかむ力が強いと有利。投げる、握る、保持する、、、。腕を使うスポーツのほとんどは、前腕筋の筋トレで、競技力がアップします。
ダンベルで行う前腕筋の筋トレメニュー3選
ダンベルを使った筋トレは左右の腕を別々に動かせ、しかも軌道が固定されない自由度の高さが特徴。筋力の左右差が矯正されやすく、関節可動域いっぱいまで鍛えることができます。
ジムに行けば、幅広い重量が揃っていますし、重量可変式のダンベルであれば、自宅に置いても場所をとりません。
前腕筋の筋トレ1. ダンベル・リストカール
ダンベル・リストカールでは、前腕屈筋群(手首を手の平の方に曲げる筋肉)が鍛えられます。肘を曲げる上腕の筋肉が関与しないよう、前腕部分を固定した状態で、手首から先だけを巻き上げるように動かしましょう。
手の平側の前腕筋が発達し、握力が強くなります。手首を安定させる力も強化できるので、ケガの予防やリハビリにも採用される種目。また前腕の内側が太くなるため、肘や手首のくびれが強調でき、腕全体のアウトラインも整います。
前腕筋の筋トレとして、人気の高いトレーニングのひとつです。
How To
- ダンベルを持ち、手の平を上に向ける
- ベンチや腿で、肘から手首までを固定する
- 手首を巻き上げるように、ダンベルを上げる
- 手首を伸ばすように、ダンベルを下ろす
- 20~30回を1セットとし、2~3セットをおこなう
前腕筋の筋トレ2. リバース・リストカール
リバース・リストカールでは、前腕伸筋群(手首を手の甲の方に曲げる筋肉)が鍛えられます。手の甲側を上に向け、前腕部分を固定した状態で、手首から先だけを動かしましょう。手の甲側にある伸筋群は、細長い筋肉が多いのが特徴です。
発達すると深い溝が無数に刻まれ、ボコボコとした前腕が作れます。また、リストカールで強化できる前腕屈筋群とは、表と裏の位置関係。両方をトレーニングすると、全体のバランスが良くなるでしょう。
How To
- ダンベルを持ち、手の甲を上に向ける
- ベンチや腿で、肘から手首までを固定する
- 手首を巻き上げるように、ダンベルを上げる
- 手首を伸ばすように、ダンベルを下ろす
- 20~30回を1セットとし、2~3セットをおこなう
前腕筋の筋トレ3. スピネーション
スピネーションでは、回外筋(肘から先を外側に捻る筋肉)が鍛えられます。手の甲を上に向けダンベルを持ち、ダンベルが床と垂直になるまで動かします。
肘の深層にある小さな筋肉ですが、ドアノブやドライバーを、右手で時計回りに回す動作で使われます。発達すると、周りの前腕筋を下から押し上げるため、太くたくましい腕が演出できます。
肘関節の安定性や可動性にも関わるので、ゴルフ、テニス、野球のパフォーマンスアップや、傷害予防にも役立つ種目です。
How To
- ダンベルを持ち、手の甲を上に向ける
- ダンベルが床と垂直になるまで持ち上げる
- ダンベルが床と平行になるまで戻す
- 20~30回を1セットとし、2~3セットを行う
バーベルで行う前腕筋の筋トレメニュー2選
バーベルを使っても、前腕筋の筋トレは行えます。一本のバーを両手で握れるぶん、フォームを安定させやすいのが特徴です。左右を別々に動かせるダンベルと比べ、バランスを気にする必要がありません。負荷に意識を集中しやすく、強い筋肉の張りが得られます。
前腕筋の筋トレ1. バーベル・リストカール
バーベル・リストカールでは、前腕屈筋群(手首を手の平の方に曲げる筋肉)が鍛えられます。手の平を上に向けバーベルを持ち、前腕部分を固定した状態で、手首から先だけを巻き上げるように動かします。
握力の強化による競技力アップ、肘・手首のケガ予防として効果的な種目です。また、前腕筋の内側が発達することで、全体のボリューム感を演出できます。
How To
- 肩幅くらいの間をあけてバーベルを両手で持ち、手の平を上に向ける
- ベンチや腿で、肘から手首までを固定する
- 手首を巻き上げるように、バーベルを上げる
- 手首を伸ばすように、バーベルを下ろす
- 20~30回を1セットとし、2~3セットを行う
前腕筋の筋トレ2. フィンガーカール
フィンガーカールでは、浅指屈筋・深指屈筋(手の指を曲げる筋肉)が鍛えられます。手をパーにして、指でひっかけるようにダンベルかバーベルを持ち、指先から手前に巻き込んでいく種目です。指を曲げる筋肉は、握力と深く関係しています。
テニスやゴルフの道具を握る力や、格闘技で相手をつかむ力、水泳での水をかく力も強化が可能。見た目はとても地味ですが、コツコツと取り組めば、ライバルに差をつけられるトレーニングです。
How To
- 手の平を上にし、親指以外の指の第1関節と第2関節の間で、ダンベル(バーベル)を持つ
- ベンチや腿で、肘から手首までを固定する
- 指先から巻き上げるように、ダンベル(バーベル)を上げる(★手の平をパーから、グーにするイメージ)
- 手の平と指を開いて、ダンベル(バーベル)を下げる
器具なしでできる前腕筋の筋トレメニュー3選
重たいダンベルやバーベルがなくても、前腕筋の筋トレは可能です。ジムに通えなくても、かまいません。自宅や職場で一畳分のスペースがあれば、太くてかっこいい前腕は作れます。
前腕筋の筋トレ1. グーパー法
グーパー法では、前腕屈筋群(手をグーにする筋肉)と前腕伸筋群(手をパーにする筋肉)が、総合的に鍛えられます。手の甲を上にし、両腕を肩の高さに保ち、グーパーを繰り返します。
重りを使わないぶん、床方向に働く重力が負荷のひとつです。また、典型的なパンプアップ種目のため、多回数でとことん追い込むのがポイント。筋肉の収縮による代謝物で、パンパンに膨らんだ血管は、筋肥大ホルモンを分泌させるトリガーです
How To
- 手の平を下にして、両腕を肩の高さに保つ
- 全部の指をしっかり開く
- 全部の指をしっかり閉じる
- 1秒に1回のペースで、グーパーする
- 100回を1セットとし、2~3セットを行う
前腕筋の筋トレ2. お風呂で水かき
お風呂で水かきは、前腕屈筋群(手の平のほうに手首を曲げる筋肉)と、前腕伸筋群(手の甲のほうに手首を曲げる筋肉)を総合的に鍛えられます。湯舟の中で体育座りをして、前腕部分を両脚で固定。親指側を上にした状態で、両手の平を左右に振ります。
お湯の抵抗が負荷となり、前腕筋がパンプアップしてきます。お風呂の中は汗をかきやすいので、こまめな水分補給を忘れずに。そのまま体を洗い、さっぱりとして終えられるのも嬉しい要素です。
How To
- お風呂の中で体育座りをし、肘から手首までを両脚で固定する
- 親指側を上にして、両方の手の平を左右に振る
- 30~50回を1セットとし、2~3セットを行う
前腕筋の筋トレ3. 自重でできる指立て伏せ
指立て伏せでは、前腕屈筋群(手の指を曲げる筋肉)が鍛えられます。指の第一関節から先だけを床につき、腕立て伏せをします。前腕筋の筋トレの中では、最も難易度の高いひとつです。
胸、肩、上腕が主なターゲットである腕立て伏せとは違い、握力、特に指でつかむピンチ力が強くなります。ダンベルやバーベルを握る力が強化でき、他の部位をトレーニングするときに、より高重量が扱えるようになります。
20回以上できるなら、片手でチャレンジ。両手で6回以上できなければ、両膝を床に置いてやってみましょう。それも難しければ、壁に手の指をついて、体幹を斜めにして行います。
How To
- 両手を肩幅より広く置き、指の第1関節から先で全身を支える
- 全身を床にゆっくり下ろしていく
- 両肘が90度に曲がったあたりで、動きをとめる
- 両手の指先で床を押して、全身を持ち上げる
- 10回を1セットとし、2~3セットを行う
その他の前腕筋の筋トレメニュー2選
筋トレの原則は、各セットをオールアウトまで行うこと。つまり、ターゲット筋を、疲労困憊させるのが目的です。マシン、自体重、フリーウェイト、筋肉に抵抗をかける手段は様々。
前腕筋の筋トレには、ゴムのチューブや、握力強化ギアを用いるトレーニング方法もあります。
前腕筋の筋トレ1. チューブ・コンセントレーションカール
チューブ・コンセントレーションカールは、腕橈骨筋(肘を曲げる筋肉)が鍛えられます。ベンチや椅子に腰掛け、片手にチューブの取っ手を握ります。持った手と同側の内ももに肘を当てて固定し、反動を使った動作を抑制。足でチューブを踏んでテンションをかけつつ、肘を曲げ伸ばしします。
腕橈骨筋は前腕と上腕をつなぐ筋肉で、親指側を上にし肘を曲げると強化が可能。発達すれば前腕の外側が盛り上がり、迫力のある見た目が作れます。また、チューブは引き伸ばされるほど、より強い負荷がかかるのが特徴。
フィニッシュポジションでの筋収縮が強まるため、高い筋肉の隆起が得られる種目です。
How To
- ベンチや椅子に腰掛け、片手でチューブの取っ手を握る
- 持った手と同側の内ももに、肘を当てて固定する
- 足でチューブを踏んで、テンションをかける
- 親指側を上に向けた状態で、肘を曲げ伸ばしする
- 10回1セットとし、2~3セットを行う
前腕筋の筋トレ2. ハンドグリップ
ハンドグリップでは、前腕屈筋群(手の平の方に手首を曲げる筋肉)や浅指屈筋・深指屈筋(手の指を曲げる筋肉)が鍛えられます。ハンドグリップ用の器具を片手で持ち、手の指を閉じたり開いたりする種目です。
握力の中でも、クラッシュ力という握り潰す力が強化できます。りんごを手で絞ってジュースにする筋力は、ハンドグリップによって獲得が可能。場所を取らずできるため、ちょっとした空き時間に行うことで、時短かつ効率的な前腕筋の筋トレができます。
How To
- ハンドグリップ用の器具を片手で持つ
- 全部の指で閉じる・開くを交互に行う
- 20~30回を1セットとし、2~3セットを行う
前腕筋を筋トレで鍛えて太く、たくましい腕を手に入れよう
前腕筋の筋トレでは、約20種類の筋肉群を機能別のグループにし、複数種目で鍛え分けるのが効果的。ポイントは各セットを、パンプアップするまで続けることです。前腕筋が発達すると、腕全体のアウトラインが整うほか、他部位のトレーニングで扱える重量もアップします。
また、腕まくりの時や半袖の季節に目立つ隆起した前腕は、たくましさの象徴。数えきれないほどのパンプを経て、すれ違う人が二度見する、太くかっこいい前腕は作られます。