デクラインベンチプレスで大胸筋の特に下部を集中して鍛えるやり方や効果の上がるコツについて詳しくご紹介します。
大胸筋下部を鍛えると、胸板に輪郭がはっきりとしたメリハリのあるラインが作れます。また女性ならラインの整ったボリュームのあるバストラインを作るのにも効果的です。
ベンチプレス系のトレーニングの中では比較的マイナーなメニューですが、初心者の方でも正しいフォームを確認したり、重量や回数・角度の設定したりできるように解説しているので、ジムや自宅トレーニングの参考にしてください。
デクラインベンチプレスとは
デクラインベンチプレスとは、“decline(下に傾く)”という名前の通り、デクラインベンチの角度を利用して頭を身体よりも下に傾けて実施するベンチプレスのバリエーションの一つです。
身体が斜めになった状態でバーベルを垂直に上げることで、身体の斜め下方に押し出すような軌道になるのが大きな特徴です。
デクラインベンチプレスが効果的な筋肉部位
デクラインベンチプレスでは、大胸筋の中でも特に下部を効果的に鍛えられます。
大胸筋は大きく分けると上部・中部・下部の3つに分けられ、それぞれ作用が異なります。大胸筋下部は「腕を斜め下方に押し出す」作用があります。
デクラインベンチプレスは、大胸筋下部の作用と同様に、腕を身体の下方に押し出す軌道で負荷をかけることで大胸筋下部を効果的に効かせられます。
そして二次的に上腕三頭筋にも効果的ですが、三角筋にはあまり負荷がかからないのもデクラインベンチプレスの特徴の一つ。ベンチプレスを肩の力で上げてしまう癖が付いている方は、デクラインベンチプレスをメニューに取り入れることで大胸筋を集中して刺激する感覚を身につけやすくなります。
デクラインベンチプレスで使う筋トレマシン・器具
デクラインベンチプレスでは、以下の筋トレマシンや器具が必要になります。
- デクラインベンチ
- バーベル
- リストラップ
自宅でデクラインベンチプレスを取り入れる方は、デクラインとインクライン両方の機能を持ったベンチが販売されています。
バーベルはラバータイプのものを選ぶと、床の傷つきなどを防ぐ事ができます。
また、デクラインベンチプレスやインクラインベンチプレスなど傾斜を利用したベンチプレス系のトレーニングはどうしても手首に負担がかかるため、リストラップを使用すると怪我を防ぐことができます。
デクラインベンチプレスの平均重量(男女別)
デクラインベンチプレスで上げられる重量は、その人の体重やトレーニングレベルによって異なるためあくまで目安となりますが、基本的にはベンチプレスとほぼ同重量が上げられます。
傾斜があることで上腕三頭筋がより力を発揮しやすいため、人によってはデクラインベンチプレスの方がベンチプレスより上がるという場合もあります。
デクラインベンチプレスの平均重量は体重75kgの男性で70kg、体重55kgの女性で30kg程度です。
ベンチプレスと同じように、男性なら自分の体重、女性なら自分の体重の半分の重量が一つの目標になります。
デクラインベンチプレスとインクラインベンチプレスの違い
デクラインベンチプレスと同じように傾斜を利用したベンチプレス系のバリエーションの中にインクラインベンチプレスがあります。
2つの違いは「頭の位置」で、デクラインベンチプレスは頭が身体よりも低くなるのに対して、インクラインベンチプレスは頭が身体よりも高くなります。
一般的にインクラインベンチプレスでは腕を身体の斜め上方に押し出す動作で大胸筋上部を効果的に鍛えられ、デクラインベンチプレスは大胸筋下部を効果的に鍛えられると言われています。
ただし、半田徹氏が2008年に実施した実験では、デクラインベンチプレスはインクラインベンチプレスよりも大胸筋鎖骨部(大胸筋上部)も効果的に刺激できるという興味深い結果も出ています。
デクラインベンチプレスの正しいフォームとやり方
デクラインベンチプレスでしっかりと大胸筋下部を効かせることができるように正しいフォームとやり方を確認してみましょう。
1. デクラインベンチに仰向けになりブリッジを作る
デクラインベンチプレスの角度を15~30度に設定して、デクラインベンチに仰向けになります。
ベンチプレス系のトレーニングを実施する際には、必ずセーフティバーを設置するようにしましょう。特にデクラインベンチプレスの場合、頭の位置が身体よりも低いため、バーベルが上がらなくなった場合に大きな事故に繋がることがあります。
2. スタートポジションを作りラックアップする
ベンチプレスと同じようにしっかりと肩甲骨を寄せてブリッジを作ったら、バーベルをラックアップします。
グリップは初心者の方は81cmのグリップラインに小指がかかる程度の少しコンパクトなグリップにしましょう。
デクラインベンチプレスは傾斜の関係で手首が反ってしまいバーベルが手持ちになりやすいですが、手首を痛める原因になるので、バーベルは手の根元で持つイメージでラックアップします。
3. バーベルを身体の斜め下方に押し出すイメージで垂直に持ち上げる
バーベルをラックアップしたら、身体の斜め下方に押し出すようなイメージで垂直に持ち上げます。
すでにデクラインベンチで傾斜が付いているので、バーベルを持ち上げる際に斜めに上げる必要はありません。角度を付けて上げると、負荷が大胸筋から抜けてしまい効果が得にくくなります。
肘が常にバーベルの真下に置くように意識すると、垂直の軌道で動作しやすくなります。
4. 大胸筋への最大負荷を感じながらゆっくりとバーベルを下ろす
デクラインベンチプレスをはじめとしたベンチプレス系のトレーニングは「ミッドレンジ種目」と言って、動作の中盤で最も筋肉に負荷がかかるメニューです。
そのためバーベルを下ろす際にも力を抜いて下ろさずに、しっかりと大胸筋下部へ負荷がかかっているのを確認しながらゆっくりと下ろしましょう。
特にスミスマシンなどを使ってデクラインベンチプレスを実施する際には、数回上げ下げして大胸筋下部へしっかり負荷がかかる位置を探すようにすると効果的にトレーニングできます。
デクラインベンチプレスの角度・重量・回数の目安
デクラインベンチプレスの角度や重量、回数は、それぞれのトレーニングレベルやトレーニングの目的によって変わってきます。
目的に応じた効果を得やすい設定方法を確認してみましょう。
デクラインベンチプレスの角度は15〜30度が目安
まずデクラインベンチの角度は15〜30度が目安になります。
ほとんどのデクラインベンチは15度刻みなので、1段角度を変えると15度になります。
インクラインベンチプレスは30〜45度が目安となるため、見ると角度が浅く感じますが、実際にバーベルを持ち上げると15度でもしっかりと大胸筋下部に効かせられます。
目的に合わせて重量や回数を設定する
デクラインベンチプレスは、トレーニングの目的に応じて重量や回数を調節するようにしましょう。
そこで重要になるのが「RM(=Repetition Maximum)」の確認です。
RMとは、「反復可能最大重量」のことで、例えばデクラインベンチプレスで40kgのバーベルを10回上げ下げするのが限界の場合、40kgが「10RM」になります。
そして下記の目的別に合わせて、重量と回数を決定しましょう。
目的 | 回数(RM) |
---|---|
筋力向上 | 3~7RM |
筋肥大 | 8~12RM |
筋持久力向上 | 13~20RM |
例えば胸板を厚くするために「筋肥大」が目的なら、「40kg(10RM)×10回」が1セットになります。
回数や重量に関係なく共通するのは「限界まで大胸筋をしっかり追い込むこと」です。
セット数は3〜5回が目安
デクラインベンチプレスのセット数は3回から5回に設定するのが一般的です。
はじめの1,2セットはRMの半分くらいの重量でアップをするようにしましょう。筋肉の温度を上げて血流を増やすことで怪我を防いだり、パフォーマンスを向上させることができます。
また、後半でどうしてもバーベルが上がらなくなることがありますが、その場合には回数を減らすのではなく、重量を減らして設定した回数をこなすようにしましょう。
デクラインベンチプレスの効果を高めるコツ3つ
デクラインベンチプレスをこれから筋トレメニューに取り入れる方のために、効果を高めるための3つのコツをご紹介します。
デクラインベンチプレスの動作で気をつけるべき点には、ベンチプレスやインクラインベンチプレスと異なる部分もあるため、確認しながら効果的にトレーニングしましょう。
コツ1. 初心者はスミスマシンでデクラインベンチプレスの動作に慣れるのも有効
デクラインベンチプレスは姿勢が不安定になりやすく、慣れが必要なメニューです。
そのため初心者の方は、軌道が固定されているスミスマシンを使うのがおすすめです。まずスミスマシンで大胸筋下部へ負荷がかかる感覚や、身体を斜めにした状態でまっすぐバーベルを持ち上げる動作に慣れるようにしましょう。
また、セーフティバーの高さが通常のベンチプレスの時と異なるため、必ず高さを調整するようにしましょう。
コツ2. セット終盤では尻を少し浮かすチーティングも有効
ベンチプレスでよくあるチーティングですが、尻を浮かせることで胸の位置を高くすると、バーベルの挙上距離(持ち上げる距離)が短くなるため、高重量でも少し楽に上がるようになります。
特にセット数を重ねてバーベルが上がらなくなった際には有効なテクニックです。
ただし、一応パワーリフティングの競技では尻を上げるチーティングは反則とされており、尻を浮かせだすときりがなくなるため、チーティングありきの重量設定は避けるようにしましょう。
コツ3. ボトムで肩甲骨の寄せを意識する
デクラインベンチプレスで初心者の方に特に多いミスがボトム(バーベルが最も下がったポイント)で肩甲骨を寄せられておらず、上へ上がり過ぎてしまうパターンです。
デクラインベンチプレスでやや肩甲骨が上方へ向いてしまうのは自然ですが、上がり過ぎてしまうと、バーベルがスムーズに下ろしにくくなってしまいます。
特にバーベルを下げる際には胸でバーベルを迎えに行くように、肩甲骨を寄せる動作を意識するようにしましょう。
【Q&A】デクラインベンチプレスについて多い質問
デクラインベンチプレスに関して、よく寄せられる質問についてもお答えします。
「ベンチが滑りやすい」など、デクラインベンチプレス“あるある”にもコツをご紹介しているので、快適で安全に実施するのに参考ください。
Q. デクラインベンチが無い場合の代用方法は?
ジムでもデクラインベンチを設置しているところは比較的少数派です。
また自宅でトレーニングするのにわざわざデクラインベンチを用意するのにも費用と場所が必要です。
そのため、専用のベンチが無い場合には、普通のフラットベンチを代用しましょう。
やり方は簡単で、フラットベンチに足をのせて体育座りになります。そして、そのまま上半身だけ仰向けになります。足に力を入れて腰を浮かせれば、頭の位置が下がってデクラインベンチを使うのと同じ効果が得られます。
ただし、若干不安定な体勢となるため、まずは軽い重量からはじめてフラットベンチでデクラインベンチプレスをするのに慣れるようにしましょう。
Q.デクラインベンチプレスをするとよく身体が滑るのはどうしたら良い?
専用のデクラインベンチを使用すると足で固定できるため滑りませんが、フラットベンチやスミスマシンを代用してデクラインベンチプレスをすると、どうしても足と背中だけで身体を支えるため、汗をかくと身体が頭の方へと滑ります。
おすすめは100均でも購入できる「滑り止めシート」を活用する方法です。
背中の当たる部分の座面上に敷いておくと、汗をかいても滑りにくくなるため安心感があります。
Q. デクラインベンチプレス以外で大胸筋に効果的なトレーニングは?
厚い胸板を作るには、いろいろな角度から大胸筋へ負荷をかけるのが効果的です。
そのためデクラインベンチプレスの他に、通常のベンチプレスやインクラインベンチプレスなどを胸のトレーニングに取り入れるとより効果を得やすくなります。
組み合わせる際には、筋肉の強度や体積に合わせて以下の順番で実施するようにしましょう。
- 大胸筋全体:ベンチプレス、ダンベルプレスなど
- 大胸筋下部:デクラインベンチプレス、ディップスなど
- 大胸筋上部:インクラインベンチプレス、インクラインチェストプラスなど
- 大胸筋内側:ダンベルフライ、ケーブルフライなど
デクラインベンチプレスで大胸筋を効果的に鍛えよう!
輪郭のはっきりした胸板やボリュームのあるバストラインに欠かせない大胸筋下部を効果的に鍛えられるデクラインベンチプレスのやり方やコツについてご紹介しました。
デクラインベンチプレスは、ベンチプレスなどと比べると知名度は低いかもしれませんが、三角筋の関与を減らせるため大胸筋を効かせやすく、初心者の方にもおすすめのメニューです。
今回はデクラインベンチプレスの正しいフォームや回数・重量の設定法までご紹介したので、大胸筋トレーニングに取り入れてみてはいかがでしょうか。