デッドリフト

デッドリフトの効果・やり方|正しいフォームや重量・回数の目安も解説

デッドリフトは、スクワットやベンチプレスと同じく筋力トレーニングの定番。腕で持ち上げているように見えますが、背中からお尻、太ももなど広範囲に引き締める効果が得られ、強い体幹を作ることができます。

ここでは、デッドリフトが効果的に作用する部位や実際のトレーニングの流れ、動作の前に意識しておきたい正しいフォーム・デッドリフトの種類とバリエーション、最適なトレーニング回数、効果を高める方法やQ&Aについて解説します。

目次

デッドリフトとは

デッドリフト

デッドリフトとは、重いものを持ち上げて下ろす動作によって、腕から背中までの上半身とお尻から太ももまでの下半身をトータルで鍛える運動です。

通常、バーベルのような重量のある物は腕の筋肉だけで持ち上げることは難しく、肩や背中など別の筋肉も使うことになります。正しいフォームを定着させると、鍛えたい部位に適度に負荷を与えられるようになります。

デッドリフトが効果的な筋肉部位

デッドリフトが効果的な部位は以下の通りです。

  • 上腕二頭筋
  • 脊柱起立筋
  • 僧帽筋
  • 広背筋
  • 大殿筋
  • ハムストリングス

バーベルを握り、支えるために前腕筋を使い、その後バーベルを引き上げる際に上腕二頭筋から背中の脊柱起立筋、僧帽筋、広背筋に効果が現れます。

正しいフォームをキープして引き上げから引き下げを行う際、腰にかかる負担を軽減するためにお尻と太ももに負荷がかかり、大殿筋とハムストリングスが鍛えられます。

腕だけでデッドリフトを行おうとすると前腕筋と上腕二頭筋のみに効果が出てしまいますが、ポジションとフォームを維持すると広背筋・僧帽筋・脊柱起立筋などの上半身から下半身にも効かせることができます。

デッドリフトで使う筋トレマシン・器具

デッドリフトで使用できる器具(マシン)は以下の3種類です。

  • バーベル
  • ダンベル
  • スミスマシン

ダンベルを使ったデッドリフトは「ダンベル・デッドリフト」と呼ばれ、バーベルがセットされたスミスマシンを使う方法は「スミスマシン・デッドリフト」と呼ばれて区別される場合もあります。

バーベルやダンベルはフリーウエイトで行うトレーニングのため経験者向きですが、レールが軌道を作ってブレないように整えてくれるスミスマシン・デッドリフトは、初心者におすすめの方法です。

デッドリフトの平均重量(男女別)

デッドリフトの重量は、体重と習熟度によって変わりますが、男性で約50kg~60kg程度、女性では約30kg~45kg程度が平均重量です。

体重が55kg程度の人でも、プロレベルの習熟度と十分な筋肉量がつくと、体重の2倍近くある100kg以上のバーベルを持ち上げることも可能になります。

ただし、目標の重さにいきなり挑戦しようとすると筋肉を痛めるリスクがあります。初めのうちは無理のない重さからスタートし、回数をこなしながら正しいフォームを定着させていく必要があります。

デッドリフトの世界記録は501kg!

デッドリフト

デッドリフトの世界記録は、アイスランドの元バスケットボール選手で「世界最強の男」コンテスト優勝経験も持つ、俳優のハフソー・ビョルンソンが、2020年5月のアイスランド大会で達成した501kgです。

身長206cm、体重205kgと大柄な体型の彼は、一般人にはまず持ち上げることが難しい重さに挑戦し、2秒間キープすることに成功。従来のデッドリフトの世界記録は500kgでしたが、それを1kg上回る形で記録更新となりました。

ハフソー・ビョルンソン氏は人気テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」にも出演し、俳優業として活躍する傍らパワーリフティングのトレーニングをこなし、記録を樹立しました。

デッドリフトの正しいフォームとやり方

デッドリフト

1. 肩幅に足を開きバーベルの後方に立つ

足を肩幅程度に開いてバーベルのやや後方に立ち、両足の親指の上にバーベルが位置する場所をスタートポジションとします。

ここから上体を前傾させて腕でバーベルを握ります。バーベルから離れていたり、足の位置がバーベルより前方に飛び出したりしないように注意します。

※スタート前は必ず正しい位置にポジショニングを行いましょう。

2. セットポジションでバーベルを握る

セットポジションが決まったら、軽くおじぎする気持ちで体を前傾させます。このとき膝を軽く曲げますが、背中からお尻までのラインが曲がらないように注意しましょう。

腕をまっすぐ下ろしてバーベルを上から握り込みます。膝がつま先より前に出ない程度に、お尻を後ろに突き出しましょう。バーベルを握ったら、姿勢が曲がらないように注意して背中を意識します。

3. 背筋をまっすぐにバーベルを持ち上げる

姿勢を崩さないまま、息を吸ってバーベルを引き上げます。すねから太ももの手前を通る(沿わせる)ようにして、背筋をまっすぐにして立ち上がります。

このとき、肘や腕だけで引き上げたり反動を使って持ち上げたりしないように注意が必要です。体を起こすときの力で、背中やお尻に効かせるように意識しながらバーベルを持ち上げるのがポイントです。

4. 背中を曲げずにバーベルを床に下ろす

体が完全に立ち上がったら、背中を曲げないように注意しながらバーベルをスタートの位置に戻します。先ほど持ち上げた場所に同じ姿勢で戻すことを意識します。

バーベルを下ろすときは息をしっかりと吐いて、引き上げた勢いや重さに任せて下ろすのではなく腕から背中の筋肉を意識して下ろします。床にバーベルを置いたところまでを1回とカウントしてください。

デッドリフトの重量や回数、セット数の目安

デッドリフト

デッドリフト初心者は、無理のない重さと回数で動作をこなし、フォームを定着させていきます。

自分の体重や習熟度に合わせて重量を上げ、回数を増やしながら強度を高めていきますが、いきなり高いレベルに進まず、以下の設定方法を参考に調整を行いましょう。

目的に合わせて重量や回数を設定する

デッドリフトのように広範囲の筋肉に負荷をかけるトレーニングは、3段階の目標に合わせて負荷の程度が変わります。

  • 筋力向上:筋力をつけていく
  • 筋肥大:筋肉を増強して大きくする
  • 筋持久力向上:筋肉の持久力(スタミナ)を高め、運動のパフォーマンスを上げる

レベル1がもっとも軽い負荷で行える運動で、段階が上がるほどに高い負荷をかけ、筋肉量の増大や持久力アップを図ります。

トレーニングでは、RM(Repetition Maximum:反復可能最大重量)と呼ばれる指標を目安とします。RMとは「動作を反復できる限界回数」という意味です。1回だけの動作で限界を迎える動作を1RMとします。

目的 回数(RM)
筋力向上 3~7RM
筋肥大 8~12RM
筋持久力向上 13~20RM

セット数は3〜5回が目安

デッドリフトのセット回数は、負荷によっては1回でも限界を迎える可能性があります。まずは、ある程度フォームに慣れた状態で3回から5回繰り返すことを目標にしましょう。

男性なら初心者で60kg程度、女性は30kg程度を3回以上こなし、レベル2の筋肉を増大させるプロセスなら負荷を軽くしたうえで8回~12回が目安となります。

広背筋や大殿筋に十分な筋肉がついて体幹が安定してきたら、今度は持久力を上げるためにさらに負荷を軽くして、13回以上を目標に設定しましょう。

デッドリフトの筋トレ効果を高めるコツ3つ

デッドリフト

デッドリフトの効果を高めるために必要なコツは大きく分けて3点です。持久力を必要とするトレーニングではないので、最初に行うことがポイントです。

安全にトレーニングを続けるために、以下のポイントを押さえておきましょう。

コツ1. 他のトレーニングより先に行う

デッドリフトはトレーニングの最初または前半に行いましょう。他のトレーニングを先に行うと筋肉が疲労するため、パフォーマンスが下がってしまう可能性があるためです。

器具の重量が重くなるほど、動作に集中力が必要になります。フォームが乱れないように安全に動作を終えるためにも、筋肉が疲労していない状態でスタートするようにしましょう。

コツ2. 背中が丸まらないようにする

デッドリフトは重さのある器具を持ち上げて負荷をかけながら、体の裏側を鍛えていく運動です。

背中が丸まってしまうと背骨や腰に負担がかかり、正しく筋肉を鍛えることができなくなってしまうため、常に肩甲骨を引き寄せて背筋をまっすぐにすることを意識しましょう。

前傾姿勢→直立→前傾姿勢のプロセスで、お尻を後方に突き出すことを意識すると背中が丸まりにくく、腰への負担も軽減できます。

コツ3. 目的に合わせて重量を設定する

デッドリフトは筋肉量や習熟度に応じて重さを変えていくもので、フォームに慣れていないうちから高負荷のトレーニングを行うことはできません。

まずは筋力を鍛える運動として、体重の8割程度の重さから始めます。それでも難しい方は8割以下に落とし、筋力アップに応じて負荷を上げていきましょう。

ただし習熟度が上がってきても、負荷を上げすぎないように要注意。無理がかかっているときは重さを落としてトレーニングを行いましょう。

デッドリフトの種類・バリエーション

デッドリフト

デッドリフトには持ち上げるときの姿勢や使用するマシンに応じて、いくつかのバリエーションがあります。

腕や背中はもちろん、お尻・太ももの内側などアプローチしたい部位に合わせてトレーニング方法を変えることもできます。

ルーマニアン・デッドリフト

ルーマニアン・デッドリフトは前腕筋・上腕二頭筋などの腕の筋肉と背筋、そして太もも裏のハムストリングスなどに効くトレーニングです。

デッドリフトのバリエーションの一つで、ルーマニア人ウエイトリフターが好んで行っていたことから名付けられました。

How To

  1. 上半身を前に倒し順手でバーベルを握る
  2. 膝をあまり曲げずにバーベルを持ち上げる
  3. お尻を突き出すようにしてバーベルを下ろす
  4. 膝の角度を一定に股関節を意識して繰り返す

腰幅程度に足を広げて立ち、バーベルを腰幅より外側の位置で握って太ももまで持ち上げます。バーベルを握った状態で肩甲骨を寄せて胸をしっかりと張ります。

息を吐きながら、背中を真っ直ぐにお尻を突き出すようにして、バーベルを床の近くまで下ろします。膝を曲げすぎないように角度は一定を意識しましょう。

太ももの裏側が伸びていることを確認しながら、再びバーベルを引き上げて直立姿勢に戻ります。胸はしっかりと張り、軌道を太ももに沿わせるように持ち上げましょう。

スモウ・デッドリフト

スモウ・デッドリフトはデッドリフトのバリエーションの一種で、下半身に効くトレーニングとして利用されています。

太ももの内側にある内転筋やお尻を支える大殿筋に効果が期待できるため、ボディメイクやO脚予防にも役立つトレーニングです。

How To

  1. 真下に腰を落とし順手でバーベルを握る
  2. 背中と膝を伸ばしてバーベルを持ち上げる
  3. 背中を曲げずにバーベルを床に下ろす
  4. 1から3までをセットとして数回繰り返す

肩幅の2倍程度に脚を開き、つま先はそれぞれ外側に向けます。背中を曲げないようにまっすぐにしながら腰を落とし、バーベルを順手で握ります。

両手で握ったバーベルを、息を吸いながら引き上げます。肩甲骨を寄せて、お尻と背中の筋肉が収縮していることを感じ、胸を張って立ち上がります。

次に、息を吐きながらバーベルを床に下ろします。通常のデッドリフトのようにゆっくりバーベルを床に下ろすと腰に負担がかかるため、持ち上げた後は時間をかけずに下ろします(床につくときに大きな音がなる場合があるため、周囲の状況を確認しながら行いましょう)。

スミスマシン・デッドリフト

スミスマシン・デッドリフトは、スミスマシンにセットされたバーベルを引き上げる運動です。フリーウエイトのトレーニングよりも軌道が安定するため、初心者にも適しています。

「通常のデッドリフトでは軌道が乱れてしまう」「重さを変えながらトレーニングがしたい」といったケースにも対応できるので、スミスマシンで慣れてから通常のデッドリフトに挑戦すると良いでしょう。

How To

  1. バーをマシンにセットして肩幅順手で持つ
  2. バーベルを体幹で持ち上げ、背中は伸ばす
  3. 体幹を固めたままバーベルを元の位置に戻す
  4. 1から3までをセットとして数回繰り返す

バーをマシンにセットした状態で、肩幅よりやや狭く立ちます。軽く膝を曲げて前傾し、順手でバーベルを上から握り込んで、胸を張るようにして持ち上げます。

お尻を突き出し、背中をまっすぐにするフォームは通常のデッドリフトと同じです。体幹は固めたまま動かさないように注意しましょう。

ダンベル・デッドリフト

ダンベル・デッドリフトは両手に持ったダンベルを持ち上げながら行うデッドリフトです。バーベルよりも腕や肩周りの可動域が広がるため、背中を重点的に鍛えたい場合に向いています。

How To

  1. 肩を落として前傾姿勢になりダンベルを持つ
  2. 背中を伸ばしダンベルごと腕を引き上げる
  3. 胸を開いた姿勢から元の前傾姿勢に戻る
  4. 1から3までをセットとして数回繰り返す

肩幅分に足を開き、肩を落として前傾姿勢をつくり、両手でそれぞれダンベルを握ります。胸を前方に突き出すようにして、背中の広背筋を意識したまま息を吸って腕を引き上げます。

息を吐き、胸を開いた姿勢から元の前傾姿勢に戻ります。ここまでのプロセスを1回として数回繰り返しましょう。

デッドリフト初心者に多いミスと注意点

デッドリフト

間違ったフォームでデッドリフトを行ったり、勢いや反動に任せて上げ下げしたりすると、筋肉を痛めたり腰に大きな負担がかかります。初めてデッドリフトを行う方は、以下の注意点を参考にトレーニングを実施してください。

バーベルはすねの近くで持ち上げる

バーベルと体の距離が離れすぎると、腕や肩にばかり力がかかり背中やお尻が鍛えづらくなります。

バーベルと体の距離が近くても、バーの軌道は必ずすね・太もものそばを通るように意識しましょう。すねの前でバーベルが離れると前に重心がかかるため、腰で支えようとして負担がかかる可能性も。

動作中はバーベルを体に引き寄せるかたちで意識し、軌道を垂直に保ちましょう。

肩甲骨を意識して引き寄せる

バーベルが重くなるほど体の前側に負担がかかるので、背中が丸まりやすくなります。肩甲骨を意識的に引き寄せて持ち上げるフォームを定着させましょう。

肩甲骨の動きが分かりづらい、動作が定着しづらいなどの場合は、軌道が乱れにくいスミスマシンを使って練習するか、軽いダンベルでフォームを確認しながらトレーニングする方法がおすすめです。

体幹・股関節を使って持ち上げる

腰まわりへの負担を減らすためには、体幹全体で持ち上げる必要があります。バーベルの重さが増えてくると腕だけで持ち上げることは困難になるので、肩甲骨を引き寄せて背中を意識しながら動作させましょう。

持ち上げの際には足をしっかりと踏ん張って太ももでも支えるようにします。お尻を突き出して背中を丸めないことによって、普段鍛えにくい体の裏側も強くしていくことができます。

【Q&A】デッドリフトについて多い質問

デッドリフト

デッドリフトは負荷がかからない重さから慣らし、徐々に重さを上げながら筋肉のパフォーマンスを高め、体幹を中心に鍛えていく運動です。

ここでは、デッドリフトに関連して多く寄せられる質問についてまとめました。

Q. デッドリフトは広背筋も鍛えられる?

広背筋は背中の横・下部にある背筋で、腕や腰とも繋がっており正しい姿勢を維持する筋肉です。広背筋を効果的に鍛えるには、上半身の負荷を高める必要があります。

背中を丸めないように胸を張り、腕を地面に対して垂直に下ろします。このポジションを守ることで背中への負荷がかかります。

また、バーベルを床ではなく膝の高さほどにおろして引き上げる「ハーフデッドリフト」は上半身に負荷がかかるため、上半身を鍛えたい場合に向いています。

Q. デッドリフトは女性にも向いている?

体幹が弱い人や、体の裏側の筋肉を広範囲に鍛えたい人にとってデッドリフトは最適なトレーニングです。

女性は男性より筋肉量の少ない人が多いので、普段なかなか鍛えられない部位を強くしていくデッドリフトが効果的です。

大殿筋を鍛えてヒップアップしたり、内転筋やハムストリングスを使って太ももをシェイプアップしたりできるので、引き締まったボディに憧れている方にも向いています。

Q. デッドリフトの注意点は?

デッドリフトは背中を丸めたり、勢いで持ち上げたりすると腰に負担がかかります。

まずは正しいフォームとして、「前傾しているときにお尻を突き出す」「肩甲骨を引き寄せて胸を張る」の動作をマスターしましょう。

特に足幅を広くとるスモウ・デッドリフトは十分に体幹が鍛えられていないと腰に負荷がかかるため、通常のデッドリフトで習熟度を上げてから挑戦することをおすすめします。

デッドリフトで腕や背中、足の筋肉を効果的に鍛えよう!

デッドリフト

デッドリフトは「筋トレのBIG3(ビッグスリー)」とも呼ばれ、トレーニングの王道として知られています。パワーリフティングのプロだけではなく、スポーツ選手やアスリートの多くが体幹を鍛えるためのトレーニングとして取り入れています。

体が硬いうちはうまく動作が定着しない可能性がありますが、動作の前に柔軟をしっかり行って正しいフォームを意識すると、少しずつトレーニング効果が引き出せるようになります。

体幹の中でも鍛えるのが難しい体の裏側の筋肉を効果的に鍛えていきましょう。

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